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徹底解説!トルリシティとインスリンの違いは?

トルリシティとインスリンは、どちらも糖尿病治療薬ですが、これら2つには成分の違いがあります。
トルリシティは消化管GLP-1を補給することでインスリン分泌を促す作用がある薬ですが、インスリン注射はインスリンそのものを注入する薬です。

そのため、体に作用する仕組みや副作用、投与できない人、使い方も違います。
この記事では、そんなトルリシティとインスリンの違いについて詳しくまとめました。
トルリシティとインスリンの切り替え・併用可否やジェネリックの有無など、気になる疑問についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
トルリシティとインスリンの仕組みの違いを解説
- トルリシティ(GLP-1)の仕組み
- インスリン注射の仕組み
ここでは、それぞれの仕組みとその違いについて解説します。
トルリシティ(GLP-1)の仕組み
トルリシティ皮下注0.75mgアテオス(デュラグルチド)は、2型糖尿病治療のための薬です。
インスリンの働きが悪くなったり、分泌量が少なくなったりしている方に適用し、血糖値を下げる効果があります。
インスリン注射とは違い、もともと体の中にあるGLP-1を補給することで、すい臓からのインスリン分泌を促す作用があります。
このような作用を持つ薬をGLP-1受容体作動薬と言いますが、週1回の投与で済むという点がトルリシティの大きな特徴です。



ただし、インスリン注射とは違い、1型糖尿病の方は使用できないので十分ご注意ください。
インスリン注射の仕組み
一方のインスリン注射は、インスリンそのものを補給する薬で、1型糖尿病・2型糖尿病の両方に適用があります。
インスリン注射の種類は以下の6つで、作用する仕組みは製剤によって違います。
超速効型インスリン製剤
- 10~20分で効果が現れ、次の食事前まで作用する
- 生理的なインスリン追加分泌パターンを再現した製剤
速効型インスリン製剤
- 30分~1時間で効果が現れ、5~8時間作用する
- 生理的なインスリン追加分泌パターンを再現した製剤
中間型インスリン製剤
- 1~3時間で効果が現れ、18~24時間作用する
- 生理的なインスリン基礎分泌パターンを再現した製剤
混合型インスリン製剤
- 超速効型または速効型と中間型インスリンを混ぜた製剤で、18~24時間作用する
- 生理的なインスリン基礎分泌と生理的なインスリン追加分泌、両方のパターンを再現した製剤
配合溶解インスリン製剤
- 超速効型と時効型溶解インスリンを混ぜた製剤で、ほぼ24時間作用する
- 生理的なインスリン基礎分泌と生理的なインスリン追加分泌、両方のパターンを再現した製剤
持効型溶解インスリン製剤
- 1~2時間で効果が現れて、ほぼ24時間作用する
- 生理的なインスリン基礎分泌と空腹時血糖の上昇を抑える作用を再現した製剤
これらの製剤はトルリシティとは違い、1日に2回投与が必要なケースもあります。
トルリシティとインスリン注射の副作用の違いを解説
インスリン注射の副作用の違いとしては、トルリシティは消化器系に対する副作用が現れるケースが多いことに対し、インスリン注射では神経系や眼に対する副作用が現れる点です。
また、トルリシティと違い、インスリン注射では注射部位に皮下脂肪の萎縮・肥厚(リポジストロフィー)が起こるケースもあります。
以下でそれぞれの副作用について詳しくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
トルリシティの副作用
トルリシティを投与することで、以下の副作用が現れるケースがあります。
重大な副作用
- 低血糖
- アナフィラキシー
- 血管浮腫
- 急性膵炎
- 腸閉塞
- 重度の下痢
- 重度の嘔吐
その他の副作用
- 循環器:心拍数の増加
- 消化器:便秘・下痢・嘔吐・食欲減退・消化不良・腹部の不快感・腹痛・腹部膨満
- 注射部位:赤み・炎症・かゆみ・腫れ・発疹
- 過敏症:むくみ・じんましん
トルリシティは腸管ホルモンGLP-1を補給する薬なので、下痢や便秘、腹痛など、お腹に対する副作用が多い点が特徴です。
もしトルリシティの使用中にこのような症状が現れた場合は、医師に相談してください。
インスリン注射の副作用
インスリン注射を投与することで、以下の副作用が現れるケースがあります。
重大な副作用
- 低血糖
- アナフィラキシーショック
その他の副作用
- 過敏症:アレルギー・じんましん・発疹・かゆみ
- 肝臓:肝機能障害
- 消化器:食欲不振
- 神経系:治療後神経障害
- 眼:糖尿病網膜症の顕在化または増悪・屈折異常
- 注射部位:痛み・赤み・膨張・リポジストロフィー(皮下脂肪の萎縮・肥厚)
- その他:むくみ・発熱
今回は速効型の副作用を抜粋したので、製剤によっては他の症状が現れることもあります。



もしインスリン注射の使用中に異常を感じた場合は、医師に相談してください。
トルリシティとインスリン注射がおすすめできる人の違い
トルリシティとインスリン注射がおすすめできる人は、以下の通りです。
- トルリシティ:ある程度インスリンの自己分泌が可能な2型糖尿病の方におすすめ
- インスリン注射:インスリンが十分に分泌できない1型・2型糖尿病の方におすすめ
この項目では、トルリシティとインスリン注射がどのような人に適しているのか、それぞれの違いについて見ていきましょう。
トルリシティがおすすめな人
トルリシティは2型糖尿病の方が使用する薬で、特に以下の方におすすめです。
- 糖尿病両方の基本である食事療法・運動療法では効果が不十分な方
- ある程度のインスリンを自己分泌できている方
- 透析患者や訪問診療の患者、生活が不規則などの理由で、週1回の投与で済むトルリシティが適している方



トルリシティの大きな特徴は、週1回の使用で済む点です。
そのため、インスリンの自己分泌が可能な2型糖尿病の方で、注射の頻度を減らしたい方におすすめです。
なお、トルリシティは他のGLP-1とは違い、体重減少作用が認められていないため、ダイエット目的の方にはおすすめできません。
インスリン注射がおすすめな人
インスリン注射は、1型糖尿病・2型糖尿病の方が使用する薬で、特に以下の方におすすめです。
- インスリンが十分に分泌できず、血糖値を正常な範囲に保つ必要がある方
- 飲み薬だけでは血糖値を正常な範囲で保つことが難しい方
- 糖尿病以外の治療で、血糖値が上がる治療薬を使用している方
- インスリン分泌がゆっくり低下する緩徐進行1型糖尿病の方
インスリン注射はGLP-1受容体作動薬とは違い、インスリンそのものを注入する薬です。
そのため、体内でインスリンが分泌できない1型糖尿病・2型糖尿病の方には、インスリン注射をおすすめします。
なお、高血糖で昏睡状態になっている方、糖尿病を合併している妊婦の方などにはインスリン注射が必須なので、医師の指示に従ってください。


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- トルリシティが投与できない人
- インスリンが投与できない人
この項目では、それぞれの薬剤が投与できない人の違いについてまとめました。
トルリシティが投与できない人



以下に当てはまる方は、トルリシティの投与ができません。
- トルリシティに含まれる成分(デュラグルチド・クエン酸ナトリウム水和物・無水クエン酸・D- マンニトール・ポリソルベート80)で過敏症を起こしたことがある方
- 糖尿病性ケトアシドーシス状態(高血糖・深く大きな呼吸・酸っぱいにおいの息)の方
- 糖尿病によって昏睡状態の方、または昏睡状態になりそうな人、1型糖尿病の方
- 重い感染症にかかっている方、手術など緊急の場合
インスリン注射と違い、糖尿病性ケトアシドーシス状態の場合はトルリシティが投与できません。
昏睡状態に陥っている方も直接インスリンを投与する必要があるため、トルリシティは向いていません。
また、以下に当てはまる方は、トルリシティの投与に対して特に慎重になる必要があります。
- 乳児・幼児・小児・高齢者
- 妊娠中または妊娠している可能性がある方
- 授乳中の方
- 重度の胃腸障害(胃不全麻痺など)がある方
- 膵炎にかかったことがある方
- 脳下垂体機能に異常のある方
- 副腎機能に異常のある方
- 十分な食事が取れていない方
- 栄養状態が悪い方
- 食事が不規則な方
- 衰弱している方
- 腹部を手術した経験がある方
- 腸閉塞になったことがある方
この他、糖尿病用薬や血糖値に作用する薬などを服用している場合、併用することで薬の作用に影響が出てしまうケースがあります。
そのため他の薬を使用している方、その他の健康状態に不安がある方は、担当の医師にご相談ください。
インスリンが投与できない人
以下に当てはまる方は、インスリンの投与ができません。
- 低血糖症状がある方
- インスリン注射に含まれる成分で過敏症を起こしたことがある方
また、以下に当てはまる方は、インスリン注射の投与に対して特に慎重になる必要があります。
- 乳児・幼児・小児・高齢者
- 妊娠中または妊娠している可能性がある方
- 授乳中の方
- 合併症や既往歴のある方
- 脳下垂体機能に異常のある方
- 副腎機能に異常のある方
- 下痢・嘔吐などの胃腸障害がある方
- 栄養状態が悪い方
- 食事が不規則な方
- 自律神経障害の方
- 重度の腎機能障害がある方
- 重度の肝機能障害がある方
この他、糖尿病用薬や三環系抗うつ剤、ステロイド、経口避妊薬などを服用している場合、併用が危険なケースもあります。
トルリシティとは違い、インスリン注射と併用できない薬も多いため、他の薬を使用している方は医師に相談してください。
トルリシティ・インスリン注射の正しい使い方を解説
トルリシティもインスリン製剤も、自分(または指導を受けた方)が注射器を使って投与します。
2つの違いとしては、トルリシティは空打ちが不要なことに対し、インスリン注射は空打ちが必要であるという点です。



それぞれの正しい使い方を紹介しますので、参考にしてください。
トルリシティの正しい使い方
トルリシティは専用ペン「アテオス」を使って簡単に自己注射できます。
その使い方は以下の通りです。
- 投与する場所を消毒用アルコール綿で消毒する
- アテオスのキャップを外す
- アテオスの側面を皮膚に当て、ロックを解除する
- アテオスを皮膚に当てたまま注入ボタンを押す
- 1度目の「カチッ」という音とともに注入が始まるので、終了を待つ
- 注入後10秒程度で2度目の「カチッ」という音が鳴ったら、アテオスを皮膚から離す
使用したアテオスを医師の指示に従って廃棄する
なお、自分で投与する場合はお腹か太ももを選びましょう。
操作方法の指導を受けている人に投与してもらう場合は、腕(上腕部)でもOKです。
インスリン注射の正しい使い方
インスリン注射にはさまざまな種類がありますが、昨今はペン型の注入器を用いるのが主流です。



今回は、「ミリオペン」の場合の使用方法を紹介します。
- 本体の色と注入ボタンの色・指示された単位数・注射のタイミングを確認する
- キャップをまっすぐ外し、ゴム栓を消毒用アルコール綿で拭く
- 注射針の保護シールをはがし、注射針をまっすぐ取り付ける
- 針ケースと針キャップを引っ張って取り外す
- 単位設定ダイヤルを回し、2単位に合わせる
- 注射針を上に向け、軽く弾いて気泡を上に集める
- 注入針を上に向けたまま注入ボタンを押し、単位窓の数字が0になるまで押し続ける
- インスリンが出ない場合は、注射針を交換して1~3の手順を繰り返す
- 指示された単位に合わせる
- 投与する場所を消毒用アルコール綿で消毒し、注射針をさす
- 単位表示窓の数字が0になるまで注入ボタンを押し込んだまま5秒以上待つ
- 注入ボタンを完全に押し込んだまま、皮膚から注射針を抜く
- 注射針に針ケースをまっすぐ被せ、注射針を回して取り外し、キャップを取り付ける
- 使用中のミリオペンは直射日光を避け、30℃以下の室内で保管する
なお、インスリンはお腹、太もも、お尻、腕(上腕部)のいずれかに投与してください。
同じ部位に注射する場合は、前回と同じ場所を避け、毎回2~3cmずつずらしましょう。
インスリンからトルリシティへの切り替えは危険?併用はできる?
インスリンからトルリシティへの切り替えは可能ですが、切り替えについての安全性・有効性を示すデータはありません。
トルリシティはインスリンの代用薬ではないので、インスリン依存状態でないことを確認し、慎重に投与する必要があります。
インスリンからトルリシティへの切り替え後は、血糖値の変動を含め、副作用がないか十分注意してください。



なお、インスリンとトルリシティの併用は可能です。
しかし、低血糖を増強させる可能性があることから、添付文書では「併用注意」と設定されています。
特に、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤、インスリン製剤をトルリシティと併用する場合は要注意です。
医師に相談し、低血糖に陥らないように薬剤の量を減らすなどの指示を仰いでください。
インスリン注射とトルリシティの違いに関するよくある質問
この項目では、インスリン注射とトルリシティの違いに関する質問を紹介します。
- トルリシティはいつ打つ?週に1回の理由は?
- トルリシティ・インスリン注射にジェネリックはありますか?
- トルリシティは通常何回分入っている?
- トルリシティの皮下注は何型に効果的?
- インスリン注射とトルリシティはどっちが高い?安い?
- トルリシティとインスリン注射は痛い?
以下で詳しく解説しますので、参考にしてください。
トルリシティはいつ打つ?週に1回の理由は?



トルリシティは、ご自分で決めた曜日に投与してください。
同じ曜日であれば、タイミングを問わずに投与して大丈夫なので、仕事や外出先に持っていく必要もありません。
どうして週1回の投与で済むのかというと、効果が持続するように製剤的な工夫がされているためです。
薬剤を投与してからの半減期は4.5日間であり、週1回の投与に対する効果が認められています。
トルリシティ・インスリン注射にジェネリックはある?
トルリシティ・インスリン注射に、ジェネリック医薬品(後発医薬品)はありません(2022年4月時点)。
ところが、昨今ではインスリンのバイオシミラーが販売され、徐々に人気を高めています。
バイオシミラーとは、特許が切れたバイオ医薬品(先行バイオ医薬品)と「ほぼ同じ有効成分」が「同じ量」含まれている薬剤のこと。
ジェネリック医薬品よりも非常に多くの試験を行い、有効性や安全性が同等だと認められています。
そのため、インスリン注射を検討している方で「なるべく安くすませたい」という場合は、バイオシミラーがないか確認してみてください。
トルリシティは通常何回分入っている?
トルリシティは、1回使い切りタイプの薬です。
超速効型や即効型のインスリン注射と違い、空打ちが不要なので、「空打ちが面倒」だと感じている方にもおすすめです。
トルリシティの皮下注は何型に効果的?
トルリシティは、糖尿病2型にのみ有効です。
インスリンの代用薬ではないので、糖尿病1型の方はトルリシティではなくインスリン注射をご使用ください。
インスリン注射とトルリシティはどっちが高い?安い?
インスリン注射の薬価は1キットあたり約1,000~2,500円。トルリシティの1キットあたりの薬価は2,917円なので、インスリン注射の方が安いです。
このほかに、自己注射指導管理料という料金が月に1回発生します。
トルリシティとインスリン注射は痛い?
トルリシティもインスリンも、注射によって投与するので、無痛というわけではありません。
へその横とななめ下は、へその下、ななめ上、わき腹に⽐べて痛みが少ないというデータがあるので、これらの部位をローテーションしながら投与するといいでしょう。



それでも痛みが心配な場合、飲むGLP-1(リベルサス)がおすすめです。
リベルサスは2型糖尿病の経口治療薬で、すい臓からのインスリン分泌を促すことによる血糖値減少作用のほか、食欲抑制作用・体重減少作用が見込めます。
詳しくはこちらで解説していますので、ぜひ参考にしてください。
▼1カ月の平均体重減少平均-5%▼


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参考文献
- 日本イーライリリー/トルリシティ(デュラグルチド)添付文書
- 日本イーライリリー/トルリシティ皮下注0.75mgアテオス 使い方ガイド
- ノボ ノルディスク ファーマ/ノボリンR注フレックスペン 添付文書
- リスト
- 日本イーライリリー/ヒューマログ注100単位/mL 添付文書
- 日本イーライリリー/ミリオペンの正しい使い方
- 日本イーライリリー/トルリシティ皮下注 0.75 mg アテオス 2.6.1 緒言
- 厚生労働省/バイオ医薬品・バイオシミラーって何?
- KEGG/商品一覧 : インスリン
- ミクスOnline/【速報】22年度薬価改定 再算定のビンダケルは75%、イーケプラは25%引下げへ
- J-STAGE/インスリン⾃⼰注射における腹部穿刺部位別の穿刺時痛の差と lipohypertrophy 形成部位の関連性