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夜の食欲が止まらない理由とは?対処法と合わせてご紹介!

「お腹が空いていなかったはずなのに、夜になると食欲が止まらなくなる」
このような行動に心当たりがある場合、「夜食症候群(夜間摂食飲水症候群)」の可能性があります。
「夜食症候群」は「Night Eating Syndrome(NES)」とも呼ばれており、働き盛りのビジネスパーソンや女性に増えています。
1日の摂取カロリーの25~50%にも及ぶ食事を夕食後にとってしまうことから、立派な摂食障害として知られています。
そこでこの記事では、夜食症候群の症状や健康リスク、原因についてまとめました。
対処法についても触れていますので、夜のドカ食いに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
夜食症候群のよくある症状リスト
- 日中の食事量は人並みでコントロールもできている
- 夕食後、夜遅くに食欲が沸いてコントロールできない
- 空腹ではないのに食べてしまう
- 夕食・夜食で1日の摂取カロリーの25~50%をとってしまう
- これらの行為を情けないと感じているが、辞められない
これらの症状に当てはまる場合は、夜食症候群を疑う必要があります。
「夕食を食べ損ねて夜遅くにご飯を食べた」「どうしてもお腹が空いて眠れないのでご飯を食べた」というケースは誰でも経験していると思いますが、夜食症候群の場合は慢性化してしまっているのが特徴です。
また、前日のむちゃ食いによって睡眠の質が悪くなったり、朝の食欲がなかったりすることから、鬱や不眠などの二次障害を引き起こすケースも。
自分で体によくない行動だとわかっているのに食欲が暴走している状態なので、心身ともに大きな負担がかかってしまいます。
夜食症候群が引き起こす健康リスク

夜食症候群は、単なる過食や思い込みではなく、厚生労働省が注意を呼びかけている摂食障害のひとつです。
摂食障害とは、ストレスなどの精神状態や環境が原因で食習慣がコントロールできなくなってしまう障害。
夜食症候群を放置していると、以下のような疾患や症状が引き起こされるリスクが高まります。
- メタボリックシンドローム
- 糖尿病
- 動脈硬化
- 高コレステロール血症
- 高血圧(心筋梗塞、脳梗塞)
さらに、夜食症候群は「睡眠関連食行動障害(sleep related eating disorder : SRED)」と合併する可能性もあります。
睡眠関連食行動障害とは、睡眠中や反覚醒状態で無意識に飲食を繰り返してしまう症状のこと。
炭水化物や脂肪分など高カロリーな食品のほか、調理されていない生ものや食べ物ではないもの(タバコや洗剤など)を食べてしまうというケースも知られています。
眠っても休息が取れなかったり、日中に疲労や眠気を感じたりするだけでなく、抑うつ症状が引き起こされるケースも報告されています。
このような数多くのリスクがあるため、夜食症候群の疑いがある場合は早期治療が必要です。
夜に食欲が抑えられなくなる夜食症候群の4大原因

①脂肪の多い食事
夜食症候群が引き起こされる原因のひとつに、ファストフードなどの脂肪分が多い食事が挙げられます。
脂肪を摂ると、食欲をコントロールする 「レプチン」 というホルモンが分泌されるのですが、脂肪を摂りすぎるとレプチンが効きづらくなり、過食に繋がってしまいます(レプチン抵抗性)。
②遅い時間の夕食
仕事や勉強などで遅い時間に夕食をとる習慣があることも、夜食症候群を引き起こす原因のひとつです。
遅い時間の夕食が慢性化すると、食欲をコントロールするホルモン「レプチン」の働きが悪くなり、寝る前にお腹が空いてしまうのです。
また、寝る直前まで胃の中に食べ物があると睡眠の質が下がるので、「寝付けないので食べてしまう」という悪循環にも陥ります。
③ストレス
ストレスが溜まっていると、やけ食いやむちゃ食いをしてしまうという方も少なくないはずです。
これは、食事によってドーパミンやセロトニンなどの幸福をつかさどるホルモンが分泌されるため。
「ストレスを感じる出来事があり、それを解消するために過食してしまう」といった行為が習慣化されることで、夜食症候群が引き起こされてしまいます。
④睡眠不足
睡眠不足によって夜食症候群が引き起こされる可能性もあります。
これは、神経伝達物質「カンナビノイド」が増加し、食べ物への快楽的な欲求が増えるためだと考えられています。
実際、睡眠不足のせいで摂取カロリーが増え、体重増加のリスクが高まるという研究結果も出ているほどなので、睡眠不足を自覚しているなら要注意。
長時間起きていると、食欲をアップさせるホルモン「グレリン」や「コルチゾール」の分泌量が増えるほか、食欲をコントロールするホルモン「レプチン」の動きも鈍くなってしまうため、規則正しい生活を心がけることが大切です。
夜の食欲に対抗するのは本当に難しい

夜食症候群による過剰な食欲に対抗する手段としては、以下の6つが考えられます。
- 規則正しい生活を心がける
- 十分な睡眠時間を確保する
- 日頃から脂肪分を取り過ぎないようにする
- 就寝の3時間前には夕食を済ませる
- ストレスを溜めすぎない
- 我慢できないなら、昆布やスルメなどローカロリーなものを食べる
「それができたら苦労しないよ」とガッカリした方も多いでしょう。
自分の意思ではどうにもならないというのが夜食症候群の特徴なので、これらの方法で解決できなくても落ち込まないでください。
では、どうしたらいいのか。100%成功するとは限りませんが、以下で持論を述べていきます。
認知行動療法もおすすめ

夜食症候群の薬物療法としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の「塩酸セルトラリン」が選ばれることがあります。ただ、「薬には頼りたくない」とい思いがあったり、異常な食欲を自覚することで落ち込んでしまったりするようであれば、「認知行動療法」をおすすめします。
認知行動療法とは、認知(物事の捉え方)を変えることで、気分や行動が変わることを目指していく方法です。
夜食症候群に悩んでいる人は、職場のストレスや不安など、なにかしら精神的な問題を抱えている可能性があります。
たとえば、「仕事がつらい」「上司の言い方に落ち込んでばかりいる」といった悩みがある場合、夜遅くに帰ってからストレス発散のためにむちゃ食いしてしまう。夜遅くに食べることでよく眠れず、寝不足のまま仕事に行き、また上司に怒られる…。といった悪循環を繰り返しているケースが考えられます。
なので、夜のドカ食いをしてしまったら、その原因について考え、認知することも大切です。
「なにか嫌なことがあったか」「なにが嫌だったのか」「自分は○○に対してストレスを感じているんだ」…と自分の気持ちと向き合うことで、次の対処法が見えてくるでしょう。
とはいえ、「自分ではどうにもならない」という結論に達したのであれば、専門家に相談してみるのもひとつの方法です。1人で抱え込みすぎず、信頼できそうな医師や心理士を探してみてくださいね。
満腹感を長続きさせるホルモン「GLP-1」を増やすのもアリ

もうひとつのアプローチとして、食欲抑制ホルモン「GLP-1」を増やす方法もおすすめです。
GLP-1は「満腹感を長続きさせる痩せホルモン」で、誰しもが体内に持っています。
体内のGLP-1が増えると、満足感が長続きするようになるため、無理なく食事量や摂取カロリーを抑えることができます。
注射による直接投与や食事療法でGLP-1を増やすこともできるので、気になる方は下記の記事も読んでみてくださいね。
- 夜のドカ食いが習慣化しているなら、夜食症候群の可能性大
- 夜食症候群を放置すると、動脈硬化や糖尿病などのリスクが高まる
- 生活習慣を改めるのが一番だが、現代人にはそれが難しいこともある
- 自分の食欲異常に気づいたときこそ治療の第一歩
- ストレスや不安によって引き起こされているなら、認知行動療法がおすすめ
- 体内のGLP-1を増やすというアプローチ方法もおすすめ
参考文献
- 井上 雄一『睡眠関連食行動障害』
- 基礎生物学研究所『肥満をつかさどる脳内メカニズムを発見』
- THE WALL STREET JOURNAL『睡眠不足のとき食べ過ぎてしまうのはなぜ?』
- 大井 元晴『肥満症と睡眠障害』